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スポーツ指導のセオリーとは??②

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運動の司令塔「小脳」の働き

さて、小脳の運動の記憶メカニズムも、この無意識学習の領域に入ります。東大医学部、伊藤正男教授の小脳の研究をわかりやすく解説してみましょう。

小脳は運動を記憶する脳で、小脳の皮質には5種類の細胞があり、これらは綺麗に配列されています。
その中にプルキンエ細胞というのがあり、これは小脳皮質に一層に並んでいて、小脳から信号を筋肉などに送り出す役目をしています。

この細胞には2種類のシナプス(細胞間が繋がっているところ)があって、一つは小さく細胞1個あたりに約10万個、もう一つは大きくて1個だけあります。

このプルキンエ細胞の働きは、一方の神経繊維から「違う」という信号が伝達され、同時にもう一方から信号が来てプルキンエ細胞上でぶつかると干渉を起こします。
するとシナプスが化学変化を起こして、ちょうど電気のスイッチが切れたような形になります。

つまり脳波電流が流れなくなるようにしてしまうのです。

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なぜこのような働きをするのでしょうか?

スポーツの練習をすると最初は失敗ばかりします。
すると失敗するたびにその信号が小脳に送られて、その都度シナプスのスイッチが切れます。

小脳のシナプスは最初おおざっぱに繋がっていて、失敗するたびに配線を切り、正しい配線だけを残すというメカニズムになっているのです。

反復練習により上達していくのは、このようなプロセスを経るからなのです。

例えば、子どものころに自転車に乗る練習をしたとき、はじめは何度も何度もコケながら失敗を繰り返し、そのうちコケずに乗れるようになったと思います。

これはコケるたびにシナプスのスイッチが切れ、乗れるという正しい配線のみが残ったから乗れるようになったということなのです。

ですから、人間は物事の記憶(覚える)は数年経てば忘れることが多くなりますが(大脳記憶)、運動の記憶(小脳記憶)は間違った配線は残っていないため、数年たっても自転車に乗ることができるのです。

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もう少し分かりやすく言うと…?

生まれた時、「大脳」の神経細胞は全くつながっていません。
ですから、目も見えませんし耳も聞こえませんし、何か物事を記憶しているということもありません。

そこから経験などによって、その細胞どうしをつなぎ、成長していきます。

しかし、「小脳」の神経細胞は100%つながって生まれてくるのです。
そこから多くの失敗などによって、これは違う!というつながりを遮断して成長していくのです。

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ですから運動(小脳)は、失敗することによって成長することができるのです。
逆に言うと、失敗しなければ上達することはありません。

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それならば人によって上手・下手が起きるのは何故なのでしょうか?

小脳は運動時にその微調整をして、運動を正確に円滑に行う指令を出しますが、上手・下手は小脳の問題ではなく、プルキンエ細胞に信号を送ってくる大脳に問題があるようなのです。

その信号とは一体何なのでしょうか。

昔指導していた運動オンチと言われていた野球選手は、いつも何かを意識してプレイしているようでした。
また、自分は何をやっても下手だと思っていました。

ですからバッティングのとき「脇をしっかり締めないと」とか「ここで自分が打たないと」と思っていたのです。
彼自身は、いつも意識しないと上手くできないと思っていました。

プルキンエ細胞に送ってくる大脳の信号とは、このような、大脳に誤ってプログラム化された回路から発生する、思考や感情の電気パルスなのです。

試合中に勝ちを意識したり、相手にプレッシャーを感じたり、またミスを気にしたりするときに、身体が硬くなったり反射が悪くなったりするのはこのためです。

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人間は、その人の成長過程や練習過程で大脳が正しくプログラミングされていれば、誰でも素晴らしい運動能力や知能を発揮することができます。

しかし、現実の人間社会はその多くが否定的環境であるために、誤ったプログラムを学習してしまうのです。
多くの人が間違った指導を受けて、その能力を伸ばしきれないでいるのが現状です。

どうも日本の環境は失敗に対して寛大ではないようです。
幼少の頃より失敗するとすぐに咎められたり、修正させられたり、考えさせられたりする習慣が、我々の脳の意識下に植え付けられてしまっています。

生理的に表現すれば、小脳が記憶するまでいくら失敗しても自由に反復練習をさせてやらなければ、脳のプログラミングは成功しないのです。

また、意識的な指導が多いために、それが習慣となり、試合などでは実力を発揮できない原因となっています。

スポーツ(運動)を上達させるためには、大脳から発生する誤信号の原因を突き止めて、解消してやることが必要です。

ー まだまだ続く ー

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